今回は引き続き、行為の根拠についての話をしたいと思います。
私のことをまったく知らない、はじめてこのページに来たという人もいるかもしれないので、断っておきますと、私はドイツに住んでいます。その前提で記事を読んでください💛
外国人がドイツで経験すること
これは私自身がドイツで、特に外国人が集まる観光地でよく経験することなのですが、私は相手にドイツ語で話しかけているのに、相手は英語で返事をしてくるということがよくあります。
その度に私は思うのです。
この人はどのような考えのもとで英語を使っているのだろう?
私がドイツ語で話しかけているのであれば、相手も自らの母語であるドイツ語で対応するのが自然であり、それをわざわざ外国語である英語にスイッチするということは、そこになんらかの理由があるはずだと思うのです(思ったのです)。
私のドイツ語があまりにも下手すぎて通じない。そのために相手は英語で返しているのではないかと思った人がいるかもしれませんが、私が念頭に置いているのはそういうことではありません。向こうは私が言っていることを理解しているのです。理解した上での返事が英語なのです。
ただ私がドイツ語で言っていることは一応は理解できるけど、聞き取りは(十分に)できないのではないかと思われた可能性は十分あると思います。ただ、その判断はどこから来るのでしょうか。相手は私に一言もドイツ語を発していないのです。私がどれくらい聞き取れるのかまったく見当がつかないはずなのです。
だとすれば、そこにあるのは「決めつけ」なのではないでしょうか。私に対する「ドイツ人の風貌ではない(アジア人の風貌である)」「ネイティブのドイツ語ではない」といった情報から、相手は「こいつは私のドイツ語をまともに聞き取ることができないだろう」と決めつけているのです。
とはいえ、相手は私をただ低く見積もっているのではなく、「英語の方が聞き取れるだろう」と、良い意味でも決めつけていると言えます。
しかしながら、繰り返しになりますが、そんな判断が下せる情報などないはずなのです。英語で返される度に、私は「またか」と思い、うんざりするのです。
またか、もううんざり…
外国人が日本で経験すること
ここで「相手がドイツ語で話しかけてきたら、よほどの理由がない限り、ドイツ語で対応すべき」と書いても、ドイツ人には届きません。しかし、私が経験することと同じことを外国人も日本で経験しているのです。
つまり、日本語を勉強しているドイツ人も、日本で相手に日本語で話しかけているのに、英語で返されることがよくあると言うのです。
そして、ここには、より一層理解しがたい面が認められます。―—ドイツ語で話す私に対して英語で返してきた人たちは、みんな私よりも英語が上手でした。他方で、日本で日本語で話しかけているのに英語で返されるドイツ人の多くが以下のように言うのです。
その日本人の英語は下手で、何を言っているのか分からなかった。「頼むから日本語で言ってくれ!」と思ったけれど、言えなかった・・・。
自分の英語が上手でないのなら尚更、仮に上手であったとしても、これは礼儀の問題です。みなさん、外国人の風貌の人が、片言の日本語で話しかけてきたとしたら、正々堂々と日本語で対応しましょう。
外国人が中国で経験すること
今回は、相手が現地の言葉を使用しているのであれば、その意思を挫くべきではないという趣旨の話をしましたが、それに関連する、最近聞いた、ある興味深い話を紹介したいと思います。
私の勤めている大学には日本語学科の他に中国語学科もあり、その両方を専攻している学生も少なくありません。そのなかの一人の学生が、日本で日本語、中国で中国語で話したときの、それぞれの国の人の反応がまったく違う、むしろ正反対だと言うのです。
彼が日本で日本語を使うと以下のような反応をされることが大半だと言うのです。
まあ、日本語がお上手ですね。
たいていは感心されるというのです。私たち日本人からすると「確かに、そうかもしれない」と思うのではないでしょうか。
ところが、彼が中国で中国語を話していると、面と向かって以下のようなことを言われると言うのです。
変な中国語だな。
おまえ中国語下手だよ。
中国語を勉強しているその彼は、これでは中国語を話そうとする気が失せてくると言っていました。至極もっともな感想だと思います。
言いたいこと
せっかく外国人が私たちの国に関心を持ち、その国の言語を勉強して使おうとしているのであれば、私はその意思を大切にしたいと思います。