オンライン講座の受講生募集

来年1月から、NHK文化センターでオンライン講座を担当することになりました。テーマはもちろんカント倫理学!事前知識がなくとも理解できるように話します。とはいえ一人で話すつもりはなく、みなさんと積極的にやり取りしていきたいと思っています。私自身の学びの場にしたい!

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部活動の閉鎖性について

カント倫理学

私は近日発売される新書のなかで、道徳教育と絡めて高校野球の閉鎖性について問題点を指摘しました。

こちらは野球部ではなく、サッカー部なのですが、私が本のなかで指摘した問題点を凝縮したような出来事がつい先日、明るみに出ました。秀岳館高校サッカー部の事件です。概要について簡単にまとめておきますと、まずコーチが生徒に暴力を振るっている動画が流出しました。他方、コーチよりも上の立場にある監督は、コーチの暴力について知らなかったとし、自身の暴力についても否定したのです。ところが、多くのOBが自らが監督から体罰を受けたことを告発したことにより、監督自身の暴力とウソが白日の下に晒されることになったのです。

またTwitter上に、コーチの暴力の原因が生徒の側にあることを生徒たち自身が認める動画がアップされました。本来被害者であるはずの生徒たちが、自分たちが加害者であることを公に発言するという行為自体が不可解なものとして映りました。ただ、なぜそのような不可解な動画が作成されたのかについての原因についてもすぐに明らかになりました。動画というのは生徒が主体的に作成したものではなく、監督の指示によって作られたものだったのです。

ここまで露骨で酷いケースはそうそうないのかもしれませんが、指導者による暴力であり、その隠ぺい工作といったものは、未だにさまざまな学校であり、部活に存在しているのではないでしょうか。

カントの発想

カントは普遍性を追い求めます。そこでは他人、それもより多くの、そして、多様な人々の視点に立って考えることが求められるのです。

ただ人というのは長い間、狭い世界に身を置いていると、普遍的な視点を取り入れることが難しくなってしまうものです。例えば、監督やコーチが生徒に暴力を振るうことの是非について第三者から問われれば、それが是認しがたいものであることが自覚できるにしても、その第三者という存在とまったく接点がなければ、そのことに気づきにくいのです。そして、そのことに気がつかなければ、その振る舞いは往々にエスカレートしてしまうことになるのです。結果、取り返しのつかない事態に至ってしまうのです。

そのような状態にならないためにはどうすればよいのでしょうか。

方向性

大きな方向性として二つ考えられると思ってます。

1 自律性を磨く

ひとつは本にも書いたことですが、生徒に考え、自ら決断する教育を実践することです。生徒たちに考えさせれば、「自分たちを暴力で縛ってください」という方向には向かわないはずだからです。同じことを別角度から表現すると、指導者が自分の価値観を無理やり押し付けるやり方をしているから、暴力につながってしまうのです。

力で抑え込むような方法は、その場では生徒は従うかもしれませんが、その効力は時間と場所に制約されることになります。教育で養うべきは他律的な姿勢ではなく、自律的に考え、決断し、自らを律する姿勢であるはずなのです。

2 多様な人と接する

もうひとつは、同じような立場や考え方の人たちとだけ関わるようなことを避けることです。

というのも、いくら普遍的な視点に立った考えるように試みても、結局、狭い世界しか知らなければ視野は狭くなってしまうからです。カントは例えば積極的に立場の弱い人(例えば、貧しい人、病院、罪びとなど)と接することの重要性を説いています。そういった人たちとの関わりのなかで、自分とは異なる立場の人たちに寄り添って考えることができるようになるのです。

さいごに

教育現場において、「教育」とは程遠いことが行われている現実を目の当たりにすると本当につらい気持ちになります。このような現状を変えるためには現場の教師の側が勇気を持って自らの姿勢を変わる必要があるのです。