(new!) オンライン講座の受講生募集

4月26日(金)から、NHKカルチャーセンターでオンライン講座を担当します。カントや倫理学に対する事前知識があっても、なくても構いません。対話形式で進めるので、みなさんの理解度や関心にそって講座を進めていきます。

詳細はこちら

まずは自分に何ができるか考えるべきでは

カント倫理学

スーパーのレジの前に、よくお菓子が置いてあります。レジの前で列に並んでいる間に子供がほしがるのを見越して置いているわけです。あざといですね。

うちの長男は(少し変なので)まったく見向きもしませんが 次男はものすごく欲しがります。というか、大騒ぎです。先日もスーパーのレジの前で、次男が「これ欲しい~」「これ買って~」と駄々をこねていました。

すると、レジの列に並んでいた見知らぬおじさんが「あなた私の前に入りなさい」と声をかけてきたのです。そしてすかさず「私も子供がいるからあなたの気持ち分かるんだよ」と言ったのです。

私はすぐさまカントの言葉を思い出しました。カントは社会的弱者と積極的に触れるべきことを説きます。なぜなら、それによって共感感情が陶冶されるからです。

必要最低限度の物も欠いているような貧しい人々のいる場所を避けて通るようなことはせず、むしろ、そこを訪問すること、また耐え難い苦痛の共感を回避する目的で、病室や罪人を収容している監獄などを見捨てないことなどは〔間接的な〕義務である。(カント『人倫の形而上学』)

子供にあまり触れることがないような人は、子供が騒いでいても何も感じないか、むしろ、マイナスの感情を抱くことの方が多いのではないでしょうか。「ああ、うるさい」「親がなんとかしろ!」といった具合です。しかし、反対に、子供と触れる機会が多く、その大変さを分かっていれば、子供がうるさいことは当たり前であり、親がなんとかできるものではないことは身に染みて分かっているのです。だとすれば、自分に何ができるか考え、行動に移す方向に向かうはずなのです。 

引用文にあるように、カントは、貧しい人、犯罪歴がある人、病人などを挙げています。それ以外にも、お年寄りや障害者なども挙げることができるでしょう。私自身、本来であればもう少しこういった人たちに触れるよう努力をすべきなのかもしれません。自分自身を顧み、考えさせられる出来事となりました。